洞光院に由来のある物語をご紹介いたします。
むかしむかし、ここ山の田に、ひとりの孝行娘が、病気の、おっかさんとすんでいました。娘の家は貧しくて、夏になっても蚊帳を吊ることもできませんでした。夜ともなるとたくさんの蚊が、病気のおっかさんと娘をおそいます。
娘は、おっかさんのために、夜通しうちわで蚊をおいやっていましたが、そんな夜がいく晩も続いて、つかれきっていました。
ある日、娘は考えた末に、洞光院の御本尊様のお釈迦様におすがりすることにしました。「お釈迦様、どうかおっかさんをゆっくり眠らせてあげてください。」
七日目の晩のこと、いつものようにおっかさんをうちわで扇いでいるうちに眠り込んでしまった娘の夢枕に、お釈迦様が立たれました。はっと目を覚ましたおっかさんを見ると、すやすやとおだやかな寝息をたてています。あれほどうるさかった蚊の羽音が、すっかり聞こえなくなっていたのです。それからというもの、娘の家のまわりには蚊が出ることもなく、おっかさんの病気も、みるみるよくなったということです。
尾張旭市 洞光院のむかしばなし
むかしばなしを集めた本、
「せと・あさひのむかしばなし1」で
紹介されています。
※「かんす」とは、このあたりの方言で蚊のことです。「蚊帳」は、蚊をよける網のことで、昔はこの網のテントのなかにお布団を敷いて眠りました。